有松・鳴海絞りは、愛知県名古屋市緑区の有松・鳴海地域を中心に生産される絞り染めの織物です。江戸時代に誕生し、日本国内の絞り製品の大半を生産してきました。1975年(昭和50年)には、国の伝統工芸品に指定されました。「有松絞り」や「鳴海絞り」と個別に呼ばれることもあります。
有松絞りは、木綿布を藍で染めたものが代表的で、糸のくくり方により模様が変化します。この技法から「くくり染め」とも呼ばれます。全工程がほぼ手作業で行われるため、非常に手間と時間がかかります。
有松絞りは、江戸時代に尾張藩の特産品として保護され、その後も明治から大正にかけて新たな技法が開発されました。最盛期には100種類以上の模様が存在し、現在でも70種類が伝えられています。この種類の豊富さは世界一とされ、他の絞り染め生産地には類を見ません。
江戸時代、有松絞りは東海道を行き交う旅人の土産物として人気を博し、葛飾北斎や歌川広重らの浮世絵にも描かれています。
有松・鳴海絞りの発祥には諸説ありますが、一般的には江戸時代初期に竹田庄九郎が「豆しぼり」を販売したのが始まりとされています。有松地域は東海道沿いに新たに開かれた集落で、尾張藩の奨励により移住者が集まりました。竹田庄九郎もその1人で、彼が絞り染めを広めたと伝えられています。
絞り染めの技法は九州・豊後地方から伝わったとされ、「三浦絞」として広まりました。この技法は21世紀にも伝えられ、人名を冠した唯一の絞り名とされています。
江戸時代には有松絞りの技術が進化し、多彩な模様が生み出されました。有松絞りは尾張藩の保護を受け、他地域での生産を制限する政策も取られました。
有松・鳴海絞りは、伝統を守りつつ新たな技術を取り入れて発展を続けています。その独特な美しさと豊かな歴史は、国内外から高い評価を受けています。現在でも「SHIBORI」として海外に広く知られています。
有松の街並みは、重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、歴史ある建物や絞り染めの工房を訪れる観光客で賑わいます。有松絞会館では、絞り染め体験や伝統工芸の展示を見ることができます。
このように、有松・鳴海絞りは日本の伝統文化を象徴する貴重な工芸品であり、今後もその価値が広く伝えられていくことでしょう。