鈴之御前社は、愛知県名古屋市熱田区に鎮座する神社で、熱田神宮の境外末社にあたります。主祭神は天鈿女命(あめのうずめのみこと)で、地元では親しみを込めて「鈴の宮(れいのみや)」と呼ばれています。この神社には古来より東海道を旅する人々や地元住民の信仰が集まってきました。
鈴之御前社の周辺にはかつて精進川という川が流れており、この川は参拝者にとって重要な場所でした。東海道を行き交う旅人たちは熱田神宮を訪れる前に、この神社で「鈴のお祓い」を受け、身を清めてから本宮へ参拝するのが習わしでした。そのため、鈴之御前社は参拝者にとって清浄な気持ちで神前に立つための入り口のような役割を果たしていました。
戦後、鈴之御前社は旧東海道に面した現在の場所に遷座しました。現在の社殿は規模は小さいものの、歴史ある雰囲気を感じさせる佇まいを保っています。地下鉄熱田神宮伝馬町駅から南西へ約50メートル進むと旧東海道に出ます。この通りを南東へ約100メートル進むと右手に境内が見えてきます。境内の幅は数メートルと狭く、国道からは少し見つけにくい場所にありますが、その分静かな雰囲気が保たれています。
鈴之御前社の例祭は毎年7月31日に行われる「夏越しの祓(なごしのはらえ)」で、この神事は「茅の輪くぐり(ちのわくぐり)」として知られています。茅の輪をくぐることで一年間の罪穢れや厄を祓い、夏の疫病除けを祈願します。この日は多くの参拝者が訪れ、境内は活気に満ちた雰囲気に包まれます。
茅の輪くぐりは古くから日本各地で行われる伝統的な神事で、無病息災を願う行事です。特に鈴之御前社では、夏の暑さや疫病が流行する時期に合わせて行われるため、多くの地元住民や参拝者が参加します。この神事を通じて、心身を清め新たな気持ちで日々を迎えることができます。
鈴之御前社のご祭神である天鈿女命は、日本神話に登場する芸能の神として知られています。天照大神が天岩戸に隠れた際に、天鈿女命が踊りを披露し、周囲を笑わせて天照大神を岩戸から誘い出したという神話は有名です。そのため、芸能や表現活動に携わる人々にも篤く信仰されています。
鈴之御前社へは、地下鉄熱田神宮伝馬町駅から南西へ徒歩約2分でアクセスできます。旧東海道沿いに位置しており、歴史の息吹を感じながら散策することもおすすめです。都会の喧騒から少し離れた静かな場所に佇む神社で、日常を忘れて心を清めるひとときを過ごせるでしょう。