長光寺は、愛知県稲沢市に位置する臨済宗妙心寺派の寺院で、深い歴史と文化財を誇る場所です。この寺は「六角堂」としても広く親しまれており、その名の通り、境内の中心に立つ地蔵堂は六角形の円堂を特徴としています。
長光寺の歴史は、仁寿元年(851年)に遡ります。小野篁が陸奥の国に下る途中、現在の稲沢市付近で休息を取った際、路傍に地蔵像を安置したことが寺の起源とされています。その後、1161年には尾張守の平頼盛が病気平癒のお礼として六角堂を寄進しました。この寄進によって、長光寺が本格的に建立されました。
その後、1336年に足利尊氏が上洛の途中で戦の勝利を祈願し、長光寺に太刀を奉納しました。このお礼として、尊氏は六角堂を祈願所として定め、さらに1338年には将軍宣下を受けた際に山門などを奉納し、寺を再興しました。織田氏や徳川家康、尾張徳川家など、後に続く名門たちによって庇護され、長光寺はその歴史を重ねていきました。
長光寺は「六角堂」の通称でも親しまれています。その名の通り、境内の中央にある地蔵堂が六角形の円堂です。この六角堂は、地名の由来にもなっており、稲沢市で珍しい中国風の建築様式を持つ唐様の室町建築として注目されています。応保元年(1161年)に平頼盛によって寄進されたことが伝えられています。
地蔵堂の中には、重要文化財である「鉄造地蔵菩薩立像」が安置されています。鉄造地蔵菩薩立像は、文暦2年(1235年)に作られたもので、その像高は160cmに及び、慈悲深い表情を浮かべています。
全身に鋳肌が美しく保たれ、鉄仏としての特徴を持ちながらも、他の鉄仏と比べても保存状態が非常に良好です。髪の毛は波形を描き、眉目も整っており、豊かな頬に慈悲深い表情が表れています。鋳造された台座も含めて、非常に精巧で美しい作りとなっています。
伝説によれば、この地蔵像は世の中に不穏なことが起きる前に全身に汗をかき、その兆しを人々に知らせるとされ、「汗かき地蔵」とも呼ばれています。
境内には「臥松水(がしょうすい)」という井戸があります。この井戸は織田信長が愛飲した水源としても知られています。信長は、若かりし頃に清須城に住んでおり、この寺が近くにあったため、頻繁にこの井戸の水を利用して茶の湯に用いたと伝えられています。臥松水は、当時非常に美味しい水と評判で、清洲城や岐阜城にも取り寄せられたとも言われています。
長光寺は織田信長とも深い縁があります。信長は、若かりし頃にこの寺で遊び、後に清洲城城代となる埴原常安と出会った場所でもあります。また、信長が愛した臥松水を利用していたことから、信長の存在を感じることができる場所ともなっています。
長光寺は、戦国時代にも重要な場所でした。天正12年(1584年)の「小牧・長久手の戦い」の際、織田信雄・徳川家康・羽柴秀吉が尾張を巡って戦っていた中で、家康が長光寺に禁制を発しました。この禁制には、長光寺境内に乱入して略奪を行うことや、寺の周囲の木や竹を伐採すること、作物を刈り取ることを禁じ、寺の安全を保障する内容が記されています。
家康が発行したこの禁制は、戦争の緊迫した状況を物語っており、その後の歴史的経緯にも影響を与えました。禁制には「福徳」の印が押されており、家康自身が発行したことが確認されています。
長光寺には「汗かき地蔵」という伝説があります。この地蔵像は、古来から村の人々を守ってきた存在であり、大きな災害や戦争の前に全身から汗をかき、その予兆を示すと伝えられています。ある日、地蔵堂を訪れた二人の兄弟は、この地蔵像が汗をかいているのを目撃します。汗を拭う人々の姿に驚いた兄弟は、近くの老人にその理由を尋ねます。
老人は、「このお地蔵様は千年もの間、この村を守ってきた存在で、病気を治したり、子供を授けたりする力を持っている。特に、大きな災害や事件が起こる前には、汗をかいてその兆しを知らせてくれるんだ」と説明しました。実際に、過去にこの地蔵が汗をかいた時期には、太平洋戦争や伊勢湾台風、大きな地震などがあったといいます。
長光寺には、数多くの貴重な文化財が保存されています。中でも、鉄造地蔵菩薩立像はその保存状態の良さと造形美で注目されています。また、徳川家康の禁制や、稲沢市指定文化財である「銅造鰐口」、江戸時代の「楼門」など、長光寺の境内には歴史的な価値のあるものが数多くあります。
これらの文化財は、長光寺が長い歴史を有し、また多くの人々に大切にされてきたことを物語っています。特に、鉄造地蔵菩薩立像はその精緻さと歴史的な価値から、重要文化財として高く評価されています。
長光寺へは、名鉄津島線の勝幡駅からタクシーで約5分の距離です。歴史的な背景と文化財を楽しみながら、ゆっくりと散策することができます。
長光寺は、歴史的な背景や文化財だけでなく、訪れる人々に心の安らぎを与える場所でもあります。古くから信仰を集めてきた地蔵像や、重要文化財の数々を直接目にすることで、歴史の重みを感じることができるでしょう。また、伝説に語られる「汗かき地蔵」の話を知ることで、この寺の特別な意味を深く理解することができます。
もし、愛知県稲沢市に訪れることがあれば、長光寺の静かな境内で、過去の歴史と伝説を感じながら、心穏やかなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。