稲沢市荻須記念美術館は、愛知県稲沢市の稲沢公園内に位置する公立美術館です。この美術館は、稲沢市出身の洋画家である荻須高徳(おぎす たかのり)氏の功績を讃え、市民の美術文化の発展を目的として建設されました。館内には荻須氏の作品や、彼がパリで使用していたアトリエの復元施設が設置され、画家の制作環境を垣間見ることができます。
1983年(昭和58年)に開館した稲沢市荻須記念美術館は、荻須高徳氏の希望を受けて設立されました。彼は「小さくとも日本の一流の美術館」であることを願い、美術館はその志を反映して地域文化に根ざした活動を続けています。
美術館の建物はその建築美も評価されており、1985年(昭和60年)には第26回BCS賞を受賞しました。また、1996年(平成8年)には荻須氏がパリで使用していたアトリエの復元施設が完成し、翌年の第4回愛知まちなみ建築賞を受賞しています。
常設展示室1・2
東京美術学校での学生時代から戦後のパリ時代までの油彩画を中心に、荻須高徳の代表的な作品約40点が展示されています。その作品は、初期の荒々しいタッチから成熟期の落ち着いた色調まで、多様な表現を楽しむことができます。
リトグラフ、水彩画、ペン素描などの多彩な作品に加え、パレットや絵筆、画集、フランス政府が発行したメダイユ、「稲沢市名誉市民章」などの資料が展示されています。荻須の創作の背景や功績に触れることができる貴重なスペースです。
1933年から1986年まで荻須が使用していたパリのアトリエを忠実に復元した施設です。家具や書籍、絵の具なども展示されており、彼の制作環境を間近に感じることができます。
パリで使用したアトリエの地図や写真が展示され、荻須の活動の軌跡をたどることができます。
荻須の画業を紹介する映像を視聴できるコーナーです。
一般展示室では、市主催の特別展や市民展が開催されるほか、外部の美術団体や個人にも貸し出されています。これにより、地域のアート活動を支援しています。
吹き抜けの開放感あふれるオリエンテーションホールでは、美術館の講演会や美術講座が行われます。また、厚さ8mmのオニキスを通した柔らかな光が、ホール全体を優しく照らします。
美術鑑賞後の休憩に適した市民ロビーでは、桜の季節には満開の花を楽しむことができます。また、資料閲覧室では美術関連の書籍を自由に閲覧でき、さらに知識を深めることができます。
開館時間は9:30から17:00までで、月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始、そして国府宮はだか祭の日が休館日となっています。
荻須高徳(1901年-1986年)は、大正・昭和期を代表する洋画家で、フランス・パリを拠点に活動しました。彼の作品は、初期の荒々しいタッチから穏やかな色調と静寂さを備えたものへと変遷し、パリの街角や都市風景を描いた作品で知られています。
1928年(昭和3年)のサロン・ドートンヌ入選を皮切りに、1936年(昭和11年)には同会員に推挙されるなど、フランスで高い評価を受けました。彼の死後も、文化勲章が追贈されるなど、その功績は広く認められています。数多くの栄誉を受けた荻須は「最もフランス的な日本人」として称賛されました。
『広告塔』(1928年)、『サン・タンドレ・デザール広場』(1938年)、『モンマルトル裏』(1940年)など、多くの名作を残しています。
稲沢市荻須記念美術館は、荻須高徳氏の作品と生涯を通じて、パリの情景や芸術の深みを感じることができる場所です。また、美術館を取り囲む稲沢公園の自然も楽しむことができ、訪れる人々にゆったりとした時間を提供しています。