とこなめ陶の森は、愛知県常滑市に位置する文化施設で、常滑焼の伝統と未来をつなぐ拠点として知られています。ここは、常滑焼の歴史と技術の継承、さらに新たな創造の場として、地域文化の発展に大きく貢献しています。
この施設は、「資料館」と「陶芸研究所・研修工房」の二つの主要な機能を持ち、常滑焼に関する地域資料の収集・保管・研究、そして陶芸家の育成と支援を目的としています。2012年(平成24年)、常滑市民俗資料館と常滑市立陶芸研究所が統合され、「とこなめ陶の森」として新たに開館しました。
1961年(昭和36年)に竣工した陶芸研究所は、近代日本建築を代表する建築家、堀口捨己氏によって設計されました。茶室の研究でも名高い堀口氏は、和の精神を緻密に取り入れつつ、モダン建築との融合を試みました。
建物は地下1階・地上2階建の鉄筋コンクリート造で、内部には吊り階段や茶室など、伝統的な日本美とモダニズムが見事に調和しています。
建物の外観は、紫系統のモザイクタイルで装飾され、壁から3.5m張り出した庇や、屋上のトップライト(天窓)が特徴的です。これらの要素は左右非対称に配置されており、数寄屋造りの美意識と近代建築の機能性が見事に融合しています。
また、展示室には特別な採光窓が設置されており、屋根裏に光を反射させることで、自然光が均一に入るよう工夫されています。これにより、作品の美しさが最大限に引き出されています。
とこなめ陶の森の常設展示は、「つながる千年、ひろがる千年、暮らしの中で生きる常滑焼」をテーマにしています。常滑焼がどのようにこの地で栄え、人々の生活に根付いてきたのか、その歴史と技術が分かりやすく紹介されています。
常設展示は以下の二つのエリアに分かれています。
1983年から開始された研修生事業では、40歳未満の陶芸家志望者を対象に、常滑で活動する職人や作家が直接指導を行います。
研修期間は2年間で、1年目は基礎技術、2年目は応用技術を習得します。これまでに163名の卒業生を輩出し、その中には世界的に活躍する陶芸家もいます。
常設展示室では、国指定重要有形民俗文化財である「常滑の陶器の生産用具及び製品」のうち約300点が展示されており、製土、成形、乾燥、施釉、窯入れ、焼成、窯出し、運搬といった各工程が分かりやすく紹介されています。
特別展示室では定期的に企画展が開催され、常滑焼の新しい表現や、現代アートとのコラボレーション作品が展示されます。さらに、来館者が実際に陶芸を体験できるワークショップも定期的に開催され、子どもから大人まで楽しめる内容が充実しています。
1961年(昭和36年)10月、伊奈製陶株式会社(現在のLIXIL)の創業者である伊奈長三郎氏が、同社の株式15万株を常滑市に寄付したことをきっかけに、常滑市立陶芸研究所が設立されました。当時、常滑の陶磁器産業は工業製品としての陶業が中心で、芸術性の高い陶芸はあまり注目されていませんでした。しかし、伊奈氏は「陶業の振興は陶芸の土台になる」との考えを持ち、地域全体の発展を見据えた支援を行いました。
また、同市出身の哲学者である谷川徹三氏が顧問に就任し、「古常滑」の研究や展示活動を推進しました。1983年(昭和58年)には、地元の職人や作家を講師とする研修生事業が開始され、若手陶芸家の育成が本格化しました。
1981年(昭和56年)には、国の重要有形民俗文化財に指定された「常滑の陶器の生産用具及び製品」の収蔵と展示を目的として、常滑市民俗資料館が開館しました。2012年には、これらの施設が統合され、「とこなめ陶の森」として生まれ変わりました。それに伴い、常滑市民俗資料館は「とこなめ陶の森資料館」に、常滑市立陶芸研究所は「とこなめ陶の森陶芸研究所」に改称されました。
2020年(令和2年)6月から耐震補強と展示リニューアルのために休館し、2021年(令和3年)10月16日にリニューアルオープンしました。2023年(令和5年)には、陶芸研究所の本館と正門が登録有形文化財に登録され、その歴史的価値が正式に認められました。
とこなめ陶の森は、常滑焼の歴史と技術を後世に伝えるとともに、未来の陶芸家を育成し、地域文化の発展に大きく貢献しています。訪れる人々は、単に展示を観るだけでなく、やきもの文化の奥深さと、その魅力に触れることができます。
常滑焼の歴史を肌で感じることができるこの施設は、やきものに興味がある方はもちろん、地域文化や歴史に関心がある方にもおすすめのスポットです。