二村山は、愛知県豊明市に位置する標高71.8メートルの山です。豊明市の最高地点であり、眼下に広がる濃尾平野や岡崎平野を一望できる素晴らしい景観が魅力です。遠くには猿投山や伊吹山地、御嶽山まで見渡せ、その美しい景色は古くから名勝として親しまれてきました。平安時代から歌枕としても知られ、数多くの歌や紀行文の題材となってきたこの山は、現在でも山頂から山麓にかけて、歴史を感じさせる歌碑や石碑が残されています。
二村山は、豊明市北東から南西にかけて続く丘陵群の一部で、「猿投-知多上昇帯」と呼ばれる隆起帯に位置しています。この地帯は、活断層である「猿投-境川断層」の影響を受け、北西側の地塊が南東側の地塊を覆い被すように隆起しているとされています。
山の地層は、約400万年前に堆積したシルト層や砂層、砂礫層が重なり合い、その上には更新世の赤褐色の砂礫層が散在しています。二村山の頂上近くでは、これらの地層が見られることから、地質学的にも興味深い場所です。
二村山は、豊かな自然環境が保たれており、都市計画で12.2ヘクタールが「二村山緑地」として指定されています。山麓には多くの宅地開発が行われている一方、山頂部分は貴重な緑地が保護されています。
山の植生は多様で、高木層には落葉広葉樹や針葉樹が広がり、低木層では常緑広葉樹が優勢です。また、竹林や草地が点在しており、特に春から秋にかけては花や紅葉が美しく、四季折々の自然の美しさを楽しむことができます。
近年、二村山の自然は成長した高木に覆われ、緑豊かな姿に変貌しています。江戸時代から続くソメイヨシノの植樹やツツジの植栽が行われ、展望台や散策路が整備されるなど、地域の人々の手によって保護活動が続けられています。
しかし、自然の遷移が進み、竹林や常緑広葉樹が繁茂する場所もあります。そのため、行政と地域住民は計画的な伐採や植林を行い、二村山の自然環境を保護するための努力を続けています。
二村山へのアクセスは、公共交通機関を利用する場合、名鉄バスや豊明市のひまわりバスが便利です。名鉄バスでは、名古屋鉄道名古屋本線前後駅から「藤田医科大学病院行き」や「地下鉄徳重行き」などのバスに乗り、「勅使台口」で下車すると、東側の登山口にアクセスできます。
自家用車で訪れる場合、愛知県道220号沿いの「勅使台口」バス停留所近くに駐車場があり、そこから登山口へ向かうことができます。二村山には複数の登山口があり、東西南北からアクセスできるため、登山者にとって便利な場所となっています。
二村山の登山道は、かつての鎌倉街道の道筋を踏襲しており、南東部の登山口から急坂を登ると、小峠に到達します。ここからは、豊明神社の境内を通り過ぎ、自然広場や緑地散策路へと続く尾根道が広がっています。道中は、砂利道や舗装道路が交互に現れ、歩きやすい道が続きます。
登山道の途中には、雲興寺やかつての老人憩いの家跡など、歴史的なスポットも点在しており、自然と歴史を感じながらの散策が楽しめます。
登山道を進んでいくと、尾根道を経て「峠」と呼ばれる広い平坦地に到達します。ここは、曹洞宗久護峯平野山聖應禅寺の飛地境内でもあり、地蔵堂には3体の地蔵菩薩像が安置されています。峠地蔵尊を拝むことができるほか、小休憩所やトイレも整備されています。
毎年4月8日には、釈迦の生誕を祝う行事が行われるなど、地域の人々に親しまれています。
豊明神社は沓掛町峠前21番地に所在し、市内戦没者を祭神としています。祭事は4月と10月に行われます。1948年に豊明神社構社の組織が結成され、翌年には創立されました。
境内には本殿や土俵があり、東隣には広い敷地と社務所があります。また、市内各所にあった忠魂碑や記念碑も集められています。愛知県神社庁に属し、宗教法人として登録されています。
峠地蔵尊は1977年に豊明市指定有形文化財に指定されました。山頂近くの聖應寺飛地境内にある地蔵堂には3体の石仏が安置されています。中でも、俗に「身代わり地蔵」と呼ばれる高さ115センチメートルの石造地蔵菩薩像には807年の年号が刻まれています。
地蔵尊にまつわる伝説や、旅人を襲った山賊の話が語り継がれており、地蔵尊が身代わりとなったとされています。現在では、8月24日に地蔵祭りが行われ、読経や供養が行われます。
1910年に建立されたこの碑は、勅使池の沿革を漢文で記しています。勅使池は豊明市内で最も大きなため池であり、1528年に左近衛中将経広が築造を指揮したと伝えられています。
源頼朝が1190年または1195年の上洛途上で詠んだ歌が刻まれた歌碑です。この歌は『続古今和歌集』にも収録され、1985年に名勝地歌碑建立委員会によって建てられました。
大正天皇の即位を祝して愛知県が立てた標柱で、二村山の眺望の良さを讃えています。
1920年に除幕された碑で、黒田清綱の詠歌が刻まれています。この歌は大正天皇の大嘗祭に際して披露されました。
豊明市指定有形文化財で、胴体が斜めに切断された珍しい形状の地蔵菩薩像です。この石仏は1740年に落雷で裂けたと伝えられています。
二村山展望台は1990年に改装され、高さ13.5メートルの三層構造を持つ展望台です。360°の絶景を楽しむことができ、眺望説明の鳥瞰図も設置されています。
江戸時代の俳人で名医でもあった井上士朗の句が刻まれた句碑があります。
二村山には「峠地蔵櫻」や「聖應禅寺しだれ櫻」といった桜があり、春には美しい花を咲かせます。
二村山には、古代からの街道である鎌倉街道の一部が残されています。峠地蔵尊から北西に向かって下る山道は、「なるみ」方面に向かう道筋であったとされ、現在も昔日の趣を残す林道として親しまれています。しかし、この道は藤田医科大学の立体駐車場ゲート付近で途切れてしまいます。
途中で分岐する山道を北へ進むと、藤田医科大学溝内の車道へとつながります。名古屋市緑区内の二村山への登山口はここが唯一と考えられています。かつての鎌倉街道は、現在の藤田医科大学病院の敷地内を西に走っていたとされ、濁池(にごりいけ)という池に至ります。
濁池は、江戸時代に多く見られたため池の中でも、中世以前から存在していた古い池だと考えられています。文政年間(1818年~1830年)の古地図では、濁池の南側を通る堤防道が「鎌倉」と記されています。このため、南回りの道が後に整備されたと考えられています。
峠地蔵尊の近くには、展望台へ続く山道があります。この道の沿道には、「伊藤両村先生之碑」など歴史的な石碑が建てられています。山頂は標高71.8メートルで、豊明市の最高地点となっています。
山頂には三等三角点や二村山展望台、大嘗祭悠紀歌碑、切られ地蔵尊などが設置され、訪れる人々を魅了しています。また、東屋などの休憩施設もあり、ゆっくりと自然を楽しむことができます。
二村山駐車場から直接山頂へアクセスする登山道があります。また、愛知県道220号の名古屋市と豊明市の境界付近から登る北側登り口も利用可能です。
二村山周辺の地域は、古代律令体制下において尾張国の山田郡に属していました。この地域には「両村郷」があり、二村山の地名の由来ともなっています。
律令体制下では、中路東海道に30里ごとに駅家が設置されていました。尾張国には「馬津」「新溝」「両村」の3駅があったとされ、両村駅がこの地域に存在していたと考えられています。
「両村」という地名は、古代の集落の位置関係に由来するとされ、二つの村に挟まれた場所にちなんで名付けられたと推測されています。現在でも、宿(しゅく)、本郷(ほんごう)、間米(まごめ)などの地名がその名残をとどめています。
二村山は、その歴史的背景と自然の豊かさから観光地としても魅力的です。展望台からの眺望や歴史的な碑を楽しむことができ、登山や散策に最適な場所です。また、地域の歴史に触れることで、より深い体験が得られるでしょう。
春には新緑、秋には紅葉が美しく、年間を通して異なる風景を楽しむことができます。特に秋の紅葉シーズンは、多くの観光客が訪れます。
二村山がある豊明市一帯は、古代には尾張国山田郡に属していました。この地域の歴史的な記録として、『和名類聚抄』(931年-938年)には「両村郷」が記されており、この地名が二村山の由来と考えられています。
律令体制の時代には、中路東海道が整備され、30里ごとに駅家が設置されていました。尾張国では、馬津、新溝、そして両村の3駅が設定されており、両村駅は二村山周辺にあったと考えられます。
両村駅の正確な位置については明確ではありませんが、南麓の「まやど」や「間米」が候補地とされています。また、二村山周辺の地名が駅家や街道の存在を示唆しており、歴史研究の手がかりとなっています。
『和名類聚抄』には「布多無良(ふたむら)」と記載があり、この地名が奈良時代以前から使われていた可能性が示されています。二村山周辺には、宿や本郷といった古い集落があり、それらが「ふたむら」の起源に関わっていると考えられています。
鎌倉幕府の成立により、京都と鎌倉を結ぶ鎌倉街道が整備されました。室町時代にはこの街道に多くの宿場が存在し、二村山周辺では「沓掛宿」が重要な役割を果たしました。
平安時代中期には、二村山が和歌や紀行文の題材として登場し、その景勝地としての価値が広まりました。『後撰和歌集』にも二村山が詠まれています。
二村山へは、公共交通機関や車でアクセスが可能です。駐車場も整備されているため、家族連れでも気軽に訪れることができます。
二村山は、愛知県豊明市にある自然豊かな山で、歴史的な遺跡や美しい景観が魅力です。豊かな植生と野生動物が育まれ、地域の人々による環境保護活動も積極的に行われています。
鎌倉街道や展望台、歴史的な碑など見どころが豊富で、訪れる人々に豊かな体験を提供します。ぜひ一度足を運んで、その魅力を直接感じてみてください。