桜井寺は、愛知県岡崎市桜井寺町にある高野山真言宗の寺院です。山号は花園山で、三河地方における歴史ある寺院のひとつとして知られています。
寺伝によれば、弘仁4年(813年)に弘法大師空海が創建したとされています。三河五山のひとつとして長い歴史を刻んでおり、多くの信仰を集めてきました。
桜井寺は、平安時代初期の弘仁4年(813年)、高野山平等院の末寺として、弘法大師空海によって開かれたと伝えられています。開山当初から、山岳修行の場として発展し、鳳来寺、高隆寺、滝山寺、真福寺とともに「三河五山」の一つに数えられていました。
桜井寺には、弘法大師にまつわる伝説が残っています。大師がこの地を訪れた際、桜の枝で作った杖を地面に突き立てたところ、清らかな水が湧き出したといわれています。この井戸は「桜の井戸」と呼ばれ、現在も境内に残されています。
さらに、この杖はやがて葉をつけ、桜の花を咲かせるようになったとも伝えられています。この美しい伝説が、桜井寺の寺号の由来になったとされています。
室町時代から戦国時代にかけて、桜井寺は多くの戦国武将たちの信仰を集め、隆盛を極めました。しかし、永禄11年(1568年)に発生した火災により、本堂を含む伽藍の多くが焼失し、その後しばらく衰退しました。
現在の本堂は、明治43年(1910年)に棟梁・藤田米次郎によって再建されたものです。また、不動堂は元禄11年(1698年)に建立され、寛政8年(1796年)に修復された歴史ある建物となっています。
桜井寺は、多くの文化財を所蔵しており、特に「青銅の磬(けい)」は愛知県の有形文化財に指定されています。この磬は、大治2年(1127年)の銘が刻まれた貴重な仏具で、県内に現存する在銘の金石文として最古とされています。
磬の中央部分には「高野山」「東塔」と刻まれ、さらに「大治二年十一月」という年代が記されています。また、精巧に鋳出された八葉複弁の蓮華座や、美しい孔雀文様が特徴で、当時の優れた鋳造技術を今に伝えています。
桜井寺の山門と薬師堂も歴史的価値が高い建造物です。これらの建物は、虹梁や斗組などの建築様式から、元文年間(1736年~1741年)から宝暦年間(1751年~1764年)頃に建立されたと推定されています。
桜井寺の北側には、岡崎市指定の天然記念物となっている「シロバイ」の自生地があります。シロバイは、ハイノキ科に属する常緑小高木で、湿った温暖な環境を好みます。
国内では本州(愛知県以西)、四国、九州に分布し、国外では台湾や中国南部にも生育しています。しかし、愛知県内においては、桜井寺周辺にのみ自生しており、植物地理学的に非常に貴重な存在となっています。
桜井寺周辺には、シイを主とする常緑広葉樹林が広がっており、この地域は「茅原沢神明宮社叢」として知られています。このエリアのシロバイは特に生育状態が良好で、幼木も多く見られることから、比較的安定した環境が保たれています。
しかし、今後の環境変化による影響が懸念されており、岡崎市は平成20年(2008年)の「自然環境保全条例」に基づき、この自生地を希少野生動植物種の保護対象に指定しました。
桜井寺へのアクセスは、JR東海道本線「西岡崎駅」から北東へ約200メートルの距離にあります。駅から徒歩で訪れることができるため、公共交通機関を利用した観光にも便利です。
桜井寺は、弘法大師空海による創建とされる歴史ある真言宗の寺院であり、三河五山のひとつとして長い歴史を刻んできました。桜の井戸にまつわる伝説や、貴重な文化財の数々、さらにはシロバイの自生地など、見どころが豊富な寺院です。
歴史好きの方だけでなく、自然を楽しみたい方にもおすすめのスポットです。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。