愛知県 > 知多半島・常滑 > 洞雲院

洞雲院

(とううんいん)

洞雲院は、愛知県知多郡阿久比町に位置する曹洞宗の古刹で、山号を龍渓山(りゅうけいざん)と称します。知多半島の歴史と深く結びついたこの寺院は、知多四国霊場第15番札所尾張三十三観音霊場第6番札所として広く知られ、古くから多くの巡礼者や参拝者を迎えてきました。

また、洞雲院は徳川家康の生母・於大の方(おだいのかた)の菩提寺としても名高く、戦国史に名を残す人物の足跡を今に伝える、阿久比町屈指の歴史的観光地となっています。静かな境内には、時代を超えて受け継がれてきた信仰と、女性の幸せを願う祈りが今も息づいています。

洞雲院の概要と位置づけ

山号・宗派・霊場としての役割

洞雲院は曹洞宗に属し、坐禅を中心とした修行と、日常生活に寄り添う仏教を大切にしてきました。龍渓山という山号は、周囲の自然と調和した寺域の姿を象徴するものであり、境内には落ち着いた雰囲気が広がっています。

知多四国霊場、尾張三十三観音霊場の札所としての役割も担い、巡礼者にとっては心を整え、旅の節目を感じる大切な場所となっています。

由緒と創建の歴史

久松寺から洞雲院へ

洞雲院の歴史は非常に古く、天暦2年(948年)にさかのぼります。学問の神として知られる菅原道真の孫にあたる菅原雅規が開基となり、前身寺院である久松寺が創建されたと伝えられています。

その後、時代の流れとともに寺院は再興され、明應3年(1494年)、雅規の後裔である久松定益によって、曹洞宗の寺院として洞雲院が再建されました。この久松氏は、後に徳川家とも深い縁を結ぶ名門であり、洞雲院の歴史は日本史の重要な人物たちと交差していくことになります。

於大の方と洞雲院

於大の方の生涯と再婚

於大の方は、戦国時代から安土桃山時代にかけて生きた女性で、徳川家康の実母として知られています。尾張国知多郡の豪族・水野忠政の娘として生まれ、若くして岡崎の松平氏に嫁ぎ、後の家康となる竹千代を出産しました。

しかし、戦国という激動の時代の中で政情は変化し、於大の方は17歳の若さで離縁され、愛する我が子と引き離されることになります。その後、天文16年(1547年)に阿久比の坂部城主・久松俊勝に再嫁し、坂部城での生活が始まりました。

母としての深い愛情

竹千代が今川氏の人質として苦難の時代を過ごしていた間も、於大の方は密かに衣食を届けるなど、母としての深い愛情を注ぎ続けたと伝えられています。やがて竹千代が徳川家康として天下人となると、於大の方は生母として敬われ、久松家も大切に扱われるようになりました。

於大の方は慶長7年(1602年)、京都・伏見城で75年の生涯を閉じますが、その遺髪は洞雲院に納められ、現在も遺髪墓として丁重に祀られています。

洞雲院の境内と見どころ

於大の方遺髪墓と久松松平家の墓所

洞雲院の境内墓地には、於大の方の遺髪墓をはじめ、久松松平家一族の墓が13基並んでいます。これらの墓所は、徳川家の礎を支えた人々の歴史を静かに物語っており、参拝者に深い感慨を与えます。

観音懺法会(おせんぼ)

毎年3月16日には、於大の方が女性の幸福を願って始めたとされる観音懺法会(通称「おせんぼ」)が行われます。この法会は、女性の幸せや心身の安らぎを祈る行事として、今も多くの人々に大切に受け継がれています。

坂部城と洞雲院の関係

坂部城跡と歴史的背景

洞雲院から北へ約200メートルの場所には、坂部城跡が残されています。坂部城は久松定益によって築かれ、かつては阿久比城とも呼ばれました。於大の方はこの坂部城で生活し、永禄3年(1560年)には家康との感動的な再会を果たしたと伝えられています。

現在、坂部城跡は城山公園として整備され、空堀などの遺構が良好に残されています。洞雲院と坂部城跡をあわせて巡ることで、戦国時代の阿久比の歴史をより立体的に感じることができます。

観光としての洞雲院の魅力

歴史と静寂に包まれる時間

洞雲院は、華やかな観光地というよりも、静かに歴史と向き合える場所として魅力を放っています。境内に足を踏み入れると、戦国の世を生き抜いた人々の息遣いと、長い年月を経ても変わらぬ祈りの空気を感じることができるでしょう。

周辺史跡とあわせた散策

坂部城跡や、於大の方ゆかりの地である東浦町の於大公園など、周辺には関連史跡が点在しています。洞雲院を起点に、知多半島の歴史をたどる散策は、歴史好きの方はもちろん、落ち着いた観光を楽しみたい方にもおすすめです。

所在地・アクセス

基本情報

所在地:愛知県知多郡阿久比町大字卯坂字栗之木谷32番地

アクセス

名鉄河和線 坂部駅から南西へ徒歩約500メートル。駅から近く、気軽に訪れることができる点も魅力の一つです。

まとめ

洞雲院は、徳川家康の母・於大の方の菩提寺として、日本史と深く結びついた阿久比町の名刹です。千年以上にわたる歴史、母としての深い愛情を今に伝える遺髪墓、そして女性の幸せを願う祈りの行事など、訪れる人の心に静かに響く魅力が詰まっています。

阿久比町を訪れた際には、ぜひ洞雲院に足を運び、歴史と祈りに包まれたひとときをゆっくりと味わってみてはいかがでしょうか。

Information

名称
洞雲院
(とううんいん)

知多半島・常滑

愛知県