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矢勝川

(やかちがわ)

童話「ごんぎつね」の舞台として親しまれる清流

矢勝川は、愛知県知多半島を流れる阿久比川水系の二級河川で、流路延長は約4.6キロメートル、流域面積は約8.5平方キロメートルほどの小さな川です。地元では古くから「背戸川(せどがわ)」とも呼ばれ、地域の人々の暮らしに寄り添ってきました。特に有名なのが、児童文学作家・新美南吉による名作童話『ごんぎつね』の舞台として登場することで、全国的にも広く知られています。

現在の矢勝川周辺は、文学と自然、そして地域の温かな取り組みが調和した観光地として整備されており、四季折々の美しい風景を楽しみながら、ゆったりと散策できる場所として多くの人々に親しまれています。

矢勝川の地理と流れ

矢勝川は、半田市・阿久比町・常滑市の境界付近に位置する半田池を水源とし、東へと流れています。流路の途中では半田市と阿久比町の境界を縫うように進み、名鉄河和線と交差しながら、半田市岩滑やなべ東町付近で阿久比川の右岸に合流します。

合流点の近くでは、矢勝川は南北に流れる十ヶ川(半田運河)と交差しますが、ここでは伏せ越し工法と呼ばれる立体交差が採用されており、両河川は直接合流することなく、それぞれ独立した流れを保っています。このような河川構造も、土木史的に興味深い点のひとつです。

新美南吉と矢勝川の深い関わり

矢勝川は、新美南吉の代表作『ごんぎつね』の中で、兵十がうなぎを捕る川として描かれています。物語に登場する素朴でどこか切ない風景は、現在の矢勝川周辺にも色濃く残っており、訪れる人々は物語の世界に入り込んだかのような感覚を味わうことができます。

川の中流域にあたる半田市岩滑やなべ西町には新美南吉記念館が建てられており、南吉の生涯や作品、文学観について深く学ぶことができます。記念館と矢勝川を結ぶ一帯は、「童話の里」として整備され、文学散策に最適な環境が整っています。

彼岸花が彩る矢勝川の秋景色

矢勝川観光の最大の見どころといえば、何と言っても彼岸花の群生です。1990年(平成2年)から、市民の手によって堤防沿いに彼岸花の球根が植えられ始め、現在では秋の風物詩として全国的に知られる存在となりました。

例年9月下旬から10月上旬にかけて、川沿い約1.5〜2キロメートルにわたり、200万〜300万本以上とも言われる彼岸花が一斉に咲き誇ります。その光景は、まさに童話『ごんぎつね』の中に描かれた「赤い布のように咲いている」という一節を思い起こさせる、幻想的な美しさです。

この取り組みは、新美南吉と幼少期に交流のあった人物の発案をきっかけに、地域住民が力を合わせて続けてきたものであり、矢勝川が単なる自然景観にとどまらず、地域の心を映す場所であることを物語っています。

「ごんの秋まつり」と季節のイベント

彼岸花の見頃に合わせ、矢勝川周辺では毎年イベントが開催されています。2008年から始まった「童話の村 秋まつり」は、2013年の新美南吉生誕100年を機に「ごんの秋まつり」と名称を改め、現在も毎年多くの来場者で賑わいます。

期間中は、地元グルメの出店やステージイベント、文学に親しむ催しなどが行われ、子どもから大人まで楽しめる内容となっています。彼岸花だけでなく、人と文化の温もりに触れられる点も、この祭りの大きな魅力です。

散策・サイクリングに最適な環境

矢勝川の堤防上には、整備された遊歩道が設けられており、のんびりとした散策を楽しむことができます。南側堤防はウォーキングコースとして親しまれ、「ででむし広場」から新美南吉記念館までの道のりは、特に人気のルートです。

一方、北側堤防は舗装されたサイクリングロードとなっており、知多半島サイクリングロードの一部である「矢勝川と新美南吉のふるさとコース」として整備されています。自然と文学を感じながら走るこのコースは、初心者にも走りやすい距離と勾配が魅力です。

アクセス情報

電車でのアクセス

名鉄「名古屋」駅から名鉄河和線を利用し、「半田口」駅で下車します。駅から西へ徒歩約20分で新美南吉記念館に到着し、そこから矢勝川周辺の散策を楽しむことができます。

車でのアクセス

知多半島道路「半田中央IC」から約5分と、車でのアクセスも良好です。周辺には観光客向けの駐車場も整備されており、家族連れや遠方からの来訪にも便利です。

矢勝川は、童話の世界と現実の風景が穏やかに重なり合う、心安らぐ観光スポットです。文学に親しみながら自然の美しさを感じたい方にとって、ぜひ訪れていただきたい場所と言えるでしょう。

Information

名称
矢勝川
(やかちがわ)

知多半島・常滑

愛知県