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伊世賀美隧道

(いせがみ ずいどう)

伊世賀美隧道は、愛知県豊田市の伊勢神峠にある歴史的なトンネルで、登録有形文化財に指定されています。1897年(明治30年)に建設され、長年にわたり交通の要衝として利用されてきました。現在は後継トンネルである伊勢神トンネルが開通し、旧伊勢神トンネルとも呼ばれています。

伊世賀美隧道の歴史

飯田街道の要衝としての役割

信濃国と尾張国・三河国を結ぶ飯田街道は、古くから重要な交通路でした。この街道は「塩の道」や「中馬街道」とも呼ばれ、宿場ごとに馬を替えなくてもよい利便性から、特に荷物輸送において重要視されていました。

隧道の開通とその影響

明治時代の飯田街道改修の一環として、1897年(明治30年)11月に伊世賀美隧道が建設されました。全長308メートルのこのトンネルの完成により、東加茂郡と北設楽郡の交通が格段に向上し、従来の荷付馬から荷馬車による輸送が可能になりました。

昭和時代の交通事情

昭和30年代になるとモータリゼーションが進みましたが、伊世賀美隧道は当時の大型トラックに対応できず、貨物を一旦下ろして通過する必要がありました。また、定期バスは車高を低くするために錘を積んで通行するなど、制約が多かったことが知られています。

伊世賀美隧道の後継トンネル

伊勢神トンネルの開通

1960年(昭和35年)、伊世賀美隧道の後継として、全長1,245メートルの伊勢神トンネルが開通しました。当初は有料道路でしたが、1971年(昭和46年)に無料開放されました。ただし、伊勢神トンネルには車高制限(3.5メートル)があり、大型トラックやバスの通行には制限があります。

文化財としての評価

2000年(平成12年)9月26日、伊世賀美隧道は国の登録有形文化財に登録されました。東海4県に残る明治時代竣工の石造トンネルとしては、伊世賀美隧道と1905年(明治38年)開通の天城山隧道(静岡県)の2つのみが現存しています。

心霊スポットとしての側面

伊世賀美隧道は東海地方屈指の心霊スポットとも言われ、さまざまな噂が語り継がれています。たとえば、「工事の際に人柱が埋められた」「女性のすすり泣く声が聞こえる」「伊勢湾台風(1959年)の際に土砂崩れで母子が亡くなり、その霊が現れる」といった話があります。しかし、豊田市文化財課の調査によると、トンネル内やその付近で事故・災害による死亡記録は残っていません。

ラリージャパンでの使用

2022年のラリージャパン

2022年(令和4年)11月に開催された世界ラリー選手権「ラリージャパン2022」では、伊世賀美隧道を含む区間が「SS(スペシャルステージ)2・5 伊勢神SS “Isegami’s Tunnel”」として使用されました。トンネル内は一直線ではあるものの、車1台分しか通れない狭さが特徴で、世界的にも珍しい設定のステージとなりました。

2023年のラリージャパン

2023年(令和5年)も引き続きラリージャパンのSS区間として設定されました。前年のレースでは砂埃の滞留による視界不良が問題となったため、2023年には舗装工事が行われ、走行環境が改善されました。

伊世賀美隧道の特徴

規模と構造

伊世賀美隧道は標高705メートルの位置にあり、全長308メートル、高さ3.3メートル、幅3.15メートルという規模です。もともとは軍隊の大砲が通過できることを基準に設計されましたが、現在の通行車両の高さ制限は2.2メートルです。トンネル内では車のすれ違いができないため、入口には「対向車注意」の標識が設置されています。

建築技術と補修

トンネルの構造は、花崗岩を用いたルスチカ積み(粗面石積み)の付柱に迫石を二重の馬蹄形に組み上げたもので、独特の美しいアーチ形状が特徴です。当初はレンガ造りで計画されていましたが、地盤や湧水の影響を考慮し、石造に変更されました。

路面と照明の改善

かつては未舗装の砂利道でしたが、2023年のラリージャパンに向けてアスファルト舗装が施されました。また、以前はトンネル内に照明がなく、昼間でも真っ暗でしたが、現在はLED照明が設置され、安全性が向上しています。

周辺の見どころ

郡界橋

伊世賀美隧道の東側出口から約1kmの地点には、1917年(大正6年)に架けられたコンクリートアーチ橋「郡界橋」があります。この橋も歴史的価値の高い構造物で、隧道とあわせて訪れる価値のあるスポットです。

まとめ

伊世賀美隧道は、明治時代に建設された歴史的なトンネルであり、現在も文化財としてその価値を保持しています。観光スポットとしてだけでなく、ラリージャパンでの活用や心霊スポットとしての側面もあり、多様な魅力を持っています。訪れる際は、歴史や建築技術に思いを馳せながら歩いてみると、より深い魅力を感じられるでしょう。

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名称
伊世賀美隧道
(いせがみ ずいどう)

岡崎・豊田・奥三河

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