設楽町奥三河郷土館は、愛知県北設楽郡設楽町清崎にある道の駅したら内に併設された郷土資料館です。奥三河地域に息づく自然、歴史、文化、そして人々の暮らしを総合的に紹介する施設として、多くの来館者を迎えています。
本館は「奥三河のくらしとこころを伝える」をテーマに掲げ、設楽町を中心とした奥三河地域の自然環境や生きもの、大地の成り立ち、人々の生活と社会の始まり、歴史の流れ、民俗文化までを、分かりやすく丁寧に展示しています。観光で立ち寄る方はもちろん、学習や研究の場としても高い評価を受けている文化施設です。
設楽町奥三河郷土館は、もともと町内に点在していた郷土資料を守り伝える施設として、1960年(昭和35年)に設楽町郷土博物館として誕生しました。その後、1977年(昭和52年)に現在の名称である「奥三河郷土館」へ改称され、長年にわたり奥三河地域の歴史と文化を伝えてきました。
2016年(平成28年)には、施設老朽化と再整備のため一度閉館しましたが、2021年(令和3年)、道の駅したらの開業に合わせて約5年ぶりに再開館。新たな展示空間と最新の展示手法を取り入れ、観光拠点として生まれ変わりました。
設楽町は、豊川・矢作川・天竜川という三つの大河の水源地を有する、全国的にも貴重な地域です。奥三河郷土館では、こうした地理的特徴を踏まえ、森と水が織りなす豊かな自然環境を、ジオラマやパネル、標本展示を通して紹介しています。
館内に入ると、まず目に入るのは、奥三河の森を再現した情景ジオラマです。四季折々の森の表情や、そこで暮らす動植物の姿が精巧に再現され、訪れた人を奥三河の自然世界へと誘います。
自然史展示では、設楽町周辺に生息する哺乳類、鳥類、昆虫、淡水魚などの多様な生きものが紹介されています。また、地層や岩石、化石などの展示を通して、大地がどのように形成されてきたのかを学ぶことができます。
これらの展示は、自然と人の暮らしがどのように結びついてきたのかを理解する重要な手がかりとなり、奥三河という地域の個性を深く感じさせてくれます。
考古資料の展示では、縄文時代から古代にかけての遺物や、集落の形成を示す資料が紹介されています。山間部という厳しい自然環境の中で、人々がどのように生活の基盤を築いてきたのかを、実物資料と解説で丁寧に伝えています。
また、戦国時代から江戸時代にかけての歴史絵巻展示では、田峯城をはじめとする地域の城郭や、戦乱の時代を生き抜いた人々の姿が描かれ、奥三河が日本史の中で果たしてきた役割を知ることができます。
奥三河郷土館の大きな魅力の一つが、民俗資料の充実度です。江戸時代から昭和初期にかけて使用されていた農具や生活道具、山仕事の道具などが数多く展示され、当時の暮らしが立体的に再現されています。
これらの民具の多くは、地元の人々が実際に使用していたもので、大正期から長年にわたって収集・保存されてきました。設楽町産の桧材を用いた展示空間は、民具の持つ温もりや質感を引き立て、訪れる人に懐かしさと学びを同時に与えてくれます。
展示では、奥三河の人々が大切にしてきた「結(ゆい)」の精神にも焦点が当てられています。助け合い、支え合いながら生きてきた山里の暮らしが、シーン展示や解説を通して分かりやすく表現されています。
厳しい自然環境の中で培われた知恵と工夫、そして人と人とのつながりの大切さを、静かに、しかし力強く伝える展示構成が印象的です。
館外には、1968年(昭和43年)に廃線となった旧豊橋鉄道田口線で実際に使用されていた木製車両「モハ14型」が展示されています。この車両は、かつて奥三河と市街地を結び、人々の生活を支えた貴重な交通遺産です。
実物車両を間近で見ることで、当時の鉄道技術や地域交通の歴史を体感することができ、鉄道ファンだけでなく、地域史に興味を持つ方にも人気のスポットとなっています。
JR飯田線「本長篠駅」からおでかけ北設(バス)に乗車し、「道の駅したら」下車。国道257号沿いに位置し、車でのアクセスも良好です。
奥三河郷土館が併設されている道の駅したらには、地元食材を使った料理が味わえる「清嶺食堂」や、特産品が並ぶ「清嶺市場」、日本酒造りを体験できる「ほうらいせん酒らぼ」など、見どころが充実しています。
学びと観光、食と買い物を一度に楽しめる点も、この施設ならではの魅力です。郷土館で地域の背景を知った後に、地元の味覚を楽しむことで、設楽町への理解と愛着がより深まるでしょう。
設楽町奥三河郷土館は、奥三河の自然、歴史、文化、そして人々の暮らしと心を丁寧に伝える、学びに満ちた郷土資料館です。道の駅したらと一体となった新しい展示空間は、観光の合間に立ち寄るだけでなく、目的地として訪れる価値のある施設となっています。
奥三河の魅力を深く知りたい方、地域の歴史や文化に触れたい方に、ぜひ訪れてほしいスポットです。