儀典用端折長柄傘は、愛知県丹羽郡扶桑町で生産される観賞用の伝統的な傘です。
「あいちの伝統的工芸品」および「郷土伝統工芸品」に指定されており、さらに扶桑町の無形文化財にも認定されています。
この傘は、骨の端を内側に折り曲げた長柄の構造を持つのが特徴です。
かつては公家や僧侶、馬上の貴人などが使用し、その優雅な姿は格式の高さを象徴していました。
特に、豊臣秀吉が「醍醐の花見」においてこの傘を用いたという記録が残っており、その歴史の深さがうかがえます。
現在では、野点(のだて)の茶会やガーデンパーティなどの場で使用されるほか、室内装飾やイベントでの演出にも用いられています。
さらに、日本の伝統文化を象徴する工芸品として海外へも輸出され、その美しさが広く認識されています。
この傘の普及には、民芸の大家である柳宗悦(やなぎむねよし)の尽力が大きく関わっており、彼の活動によって全国的に広まったとされています。
儀典用端折長柄傘の製作は、愛知県丹羽郡扶桑町の山那地区にある尾関朱傘製作所で行われています。
この工房では、約400年にわたり、14代にわたって伝統の技法を守り続けながら傘を作り続けています。
長い歴史を持つこの工芸品は、現在でも職人の手によって一つ一つ丁寧に作られています。
端折長柄傘の最大の特徴は、骨の端を内側に折り曲げた独特の形状にあります。
この構造は、後ろから貴人にさしかける際の利便性を考慮して生まれたとされ、実用性と美しさを兼ね備えています。
豊臣秀吉が使用したという記録が残るこの傘は、時代を超えて愛され続けています。
野点の席での使用はもちろんのこと、近年ではパーティーや室内装飾など、さまざまなシーンで活用されています。
扶桑町の尾関朱傘製作所では、今なお伝統の技法を忠実に受け継ぎ、歴史ある工芸品を現代に伝えています。
儀典用端折長柄傘の製作は、すべて職人の手作業によって行われます。
その工程は多岐にわたり、細部にまでこだわりが詰まっています。
竹を使用して、親骨(おやぼね)と押上骨(おしあげぼね)を作ります。
この骨組みが傘の強度を決めるため、厳選された竹材が使用されます。
墨を柿渋で溶いた液を骨に塗り、耐久性を高めます。
この工程により、傘の骨組みが湿気に強く、長持ちするようになります。
親骨と押上骨に、それぞれ轆轤(ろくろ)を作って取り付けます。
この轆轤は、傘の開閉をスムーズにするための重要な部分です。
和紙を骨組みに張り、朱色の塗料を塗って美しく仕上げます。
朱塗りは、この傘の特徴的な色合いを生み出し、伝統的な雰囲気を引き立てます。
塗装後、一定期間乾燥させ、しっかりと仕上げます。
その後、傘を折りたたむための折り込み作業を行い、形を整えます。
傘の上部に化粧張りを施し、最後に飾り糸を掛けて仕上げます。
この装飾が、儀典用端折長柄傘の品格をさらに高めています。
儀典用端折長柄傘は、日本の伝統と美意識を象徴する工芸品です。
かつては貴人や僧侶の持ち物として使用され、現在では茶会や室内装飾など、幅広い用途で活用されています。
400年以上の歴史を持つ扶桑町の尾関朱傘製作所が、その伝統技術を今に伝え、未来へと受け継いでいます。
職人の手によって一つ一つ丁寧に作られるこの傘は、日本の工芸文化の粋を集めた逸品と言えるでしょう。