賀茂神社は、愛知県豊橋市賀茂町字神山に鎮座する、歴史と伝統に満ちた神社です。深い森に囲まれた静謐な境内には、古代から続く由緒ある社殿や数々の文化財が残されており、地域の信仰の中心地として長年にわたり人々に親しまれてきました。
賀茂神社の創建は、古代・奈良時代の天平元年(729年)と伝えられており、京都の山城国にある「賀茂別雷神社」を勧請したことに始まります。その後の戦国時代には、天文12年(1543年)に今川氏親によって神領として298貫の地が寄進され、江戸時代初頭の慶長8年(1603年)には、徳川家康公より朱印地として100石が与えられるなど、武将たちからの篤い崇敬を受けてきました。
『三河国内神明名帳』には「正四位下大伴明神、坐八名郡」との記録があり、また『三河国二葉松』(元文5年)には「賀茂村、加茂大明神、社領百石、神主竹尾玄蕃頭」といった記述が見られ、当時からの高い格式がうかがえます。
賀茂神社では、年間を通してさまざまな伝統神事が執り行われています。なかでも代表的なものに、「御戸代会(みとしろえ)」「爪切神事」「大幡神事」などがあり、古来より続く神聖な儀式が今なお継承されています。
また、「獅子と藤四郎」と呼ばれる独特な民俗行事や、「競馬神事」など、地域の人々と密接に結びついた伝統行事も盛んで、訪れる方にとっては貴重な文化体験となります。
昭和33年(1958年)に指定されたこの古面は、面長20.9cm、室町時代に作られたとされる貴重な遺物です。かつては神事に実際に用いられていたと伝わり、猿田彦命の神格を象徴する重要な文化財として保管されています。
昭和36年(1961年)に愛知県の有形文化財として指定された本殿は、一間社流造りという伝統的な建築様式で建てられ、檜皮葺の屋根を持ちます。建築面口は3.42mで、棟札から寛永元年(1624年)に建立されたことが明らかになっています。時代の風格を色濃く残す、格式高い建築です。
昭和42年(1967年)には、「賀茂神社の仮面」が豊橋市の有形文化財に指定されました。これらの仮面は、かつて神事や舞に使用されたとされ、神社の神秘性を高める貴重な資料として保存されています。
賀茂神社の境内には、昭和48年(1973年)に豊橋市指定史跡となった「神山古墳」があります。古墳時代の遺構であり、古代におけるこの地の繁栄や信仰の歴史を感じさせる神秘的な場所です。
賀茂神社の境内には、歴史を感じさせる建築物や自然の美しさを楽しめるスポットが点在しています。以下にその一部をご紹介します。
初夏になると美しい花菖蒲が咲き誇る「賀茂しょうぶ園」が見頃を迎えます。園内にかかる「太鼓橋」は、絵のように美しい景観を演出しており、訪れる人々の憩いの場となっています。
境内の石橋や参道は、自然の風合いと調和しており、静かな雰囲気の中で心を落ち着けて歩くことができます。神域へと続く参道は、荘厳でありながらもどこか懐かしい日本の風景を感じさせます。
神社の入口には、伝統的な「四脚門(しきゃくもん)」が設けられ、格式の高さを物語っています。また、手水舎では参拝前に手を清め、心を整えて神前へ向かうことができます。
境内に隣接する「賀茂しょうぶ園」は、花菖蒲の名所としても知られ、毎年多くの観光客でにぎわいます。花の見頃には、写真愛好家や家族連れの方々が訪れ、美しい自然の中で穏やかな時間を過ごしています。
賀茂神社へは、JR東海道本線・飯田線、または名鉄名古屋本線の「豊橋駅」から車で約30分の距離にあります。市街地から少し離れた静かな環境に位置しており、心を癒すひとときを過ごすのに最適です。
賀茂神社は、その由緒正しい歴史と地域に根ざした文化、豊かな自然に囲まれた風景のすべてが融合した魅力的な神社です。伝統神事に触れ、文化財をじっくりと観賞し、心静かに参拝をするひとときは、訪れる人々にとって特別な体験となることでしょう。豊橋を訪れた際には、ぜひ賀茂神社を訪れ、その荘厳な雰囲気と温かな地域の空気を感じてみてください。