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馬背岩

(うまのせいわ)

安山岩の岩脈が魅せる壮観な景観

馬背岩は、愛知県新城市豊岡地区にある宇連川(うれがわ)の河床にそびえる、安山岩でできた壮大な岩脈で、1934年(昭和9年)に国の天然記念物に指定された、貴重な地質学的遺産です。馬背岩はその名前の通り、まるで馬の背中のように河川の中央を貫いて隆起しており、迫力ある姿が訪れる人々を魅了しています。

馬背岩がある場所と周辺の環境

この馬背岩は、愛知県東部を流れる豊川水系の支流、宇連川の中流域に位置しており、湯谷温泉という歴史ある温泉地の中心部にあります。最寄り駅はJR飯田線の湯谷温泉駅で、駅から徒歩約5分というアクセスの良さも魅力のひとつです。周囲は遊歩道や歩行者専用橋などが整備され、宿泊客や観光客が気軽に散策できる自然と温泉が調和した癒しの空間です。

馬背岩の成り立ちと地質学的特徴

第三紀中新世の火山活動が生み出した岩脈

馬背岩のある奥三河地域は、約1500万年前の第三紀中新世に起きた大規模な火山活動の影響を強く受けた地域であり、周囲には凝灰角礫岩などの火山性堆積物が多く分布しています。その後の断層運動によって地殻に生じた割れ目に、安山岩質のマグマが貫入することで、岩脈が形成されました。

宇連川の水流による侵食作用により、周囲の比較的柔らかい凝灰岩部分が削られる一方で、硬い安山岩の岩脈が残り、今日のように露出した姿となったのです。このような形成過程により、馬背岩は地質学的にも非常に興味深く、教育的価値も高い岩脈とされています。

岩脈の大きさと特徴

馬背岩の全長は約122メートル、幅は2.9メートルから最大6.3メートル、高さは最大で約7メートルにも及びます。岩脈には冷却時に収縮して形成された「柱状節理」が発達しており、特に垂直方向の節理が顕著です。また、岩脈の上面には階段状の段差があり、側面には五角形または六角形の断面を持つ岩塊が並びます。

天然記念物指定とその変遷

1934年の指定当時、この岩脈は「流紋岩」と誤って記載されていましたが、その後の研究によって安山岩であることが判明しました。現地には、指定当時の解説が彫られた石板が今も残っており、地質研究の変遷を示す貴重な資料として見ることができます。

馬背岩と名号池の伝説

名号池の不思議な由来

馬背岩の中ほどにある名号池(みょうごういけ)は、直径およそ15メートルの巨大な甌穴で、宇連川の水流が長い年月をかけて岩を削ることで形成されました。この池の名称には、弘法大師・空海にまつわる興味深い伝説が語り継がれています。

空海と酒屋の老婆

今から約1200年前、名号池の少し上流の村にある酒屋に、上品な旅の僧(後の弘法大師・空海)が一夜の宿を求めて訪れました。親切な老婆は快く彼を迎え、記念に何か書いてほしいと頼みました。しかし、翌朝その願いを忘れた僧はそのまま旅立ってしまいました。老婆は慌てて追いかけ、現在の湯谷温泉付近で僧に追いつきました。

紙を持参していなかった老婆は、咄嗟に自らの手拭いを差し出しました。僧は筆と墨で手拭いに文字を書き、それを池の北側の岩壁に向けると、不思議なことに「南無阿弥陀仏」の六字名号が岩に写し取られたのです。そして僧は、自らが弘法大師であることを明かし、静かに立ち去ったと伝えられています。

高野山に伝わる手拭いの布

その後、弘法大師が書いたという手拭いは高野山の寺に納められ、名号地区の人々が参拝に訪れた際には、特別にその布を拝観できたといいます。さらに、名号地区で田植えが行われると、名号池の水面が濁り、北側の岩壁に「南無阿弥陀仏」の文字のような模様が浮かび上がるといった言い伝えも残されています。

馬背岩へのアクセス情報

所在地

愛知県新城市豊岡字中杉上(宇連川の河床)。

公共交通機関

JR東海 飯田線「湯谷温泉駅」下車後、徒歩約5分。

自動車でのアクセス

新東名高速道路「新城インターチェンジ」から、国道151号線を経由して約10.5km(車で約16分)。

まとめ:自然と歴史が織りなす名勝・馬背岩

馬背岩は、自然の造形美歴史的背景、そして地質学的価値のすべてを兼ね備えた、愛知県新城市の貴重な観光スポットです。訪れる人々に自然の偉大さと歴史のロマンを感じさせてくれるこの場所は、湯谷温泉とあわせて観光に最適なスポットとなっています。是非、実際に足を運んで、馬の背中のように力強くそびえる岩脈と、空海の伝説が息づく名号池の神秘をご体感ください。

Information

名称
馬背岩
(うまのせいわ)

豊橋・渥美半島

愛知県