本宮山は、愛知県の岡崎市・豊川市・新城市の三市にまたがってそびえる標高789メートルの山で、三河山地を代表する名峰のひとつです。山全体はスギを中心とした森林に覆われ、豊かな自然環境と長い信仰の歴史を併せ持つことから、本宮山県立自然公園に指定されています。古来より山岳信仰の対象として人々に崇められ、現在でも登山やハイキング、参拝を目的に多くの人が訪れています。
本宮山は、その標高と立地から東三河一帯を広く見渡すことができる存在感のある山です。山頂には古くから信仰を集めてきた砥鹿神社奥宮が鎮座し、尾根沿いに続く登山道は、世代を超えて東三河の人々に親しまれてきました。
一帯は県立自然公園として保全されており、スギやヒノキの人工林に加え、場所によっては広葉樹と針葉樹が混在する自然林が残されています。登山道を歩けば、巨木や奇岩、苔むした岩肌など、自然の力強さを感じる風景に次々と出会うことができます。
本宮山の大きな魅力のひとつが、四季ごとに異なる自然の表情です。春には新緑が山肌を鮮やかに彩り、夏には清涼感あふれる渓谷の風景が広がります。秋になると山全体が紅葉に包まれ、特に谷沿いでは赤や黄に染まった木々が訪れる人々を魅了します。
本宮山周辺には、乙川支流・男川の源流をなす渓谷があり、清らかな水と豊かな森林環境に恵まれています。この地域にはキャンプ場やデイキャンプ場、バンガロー、コテージなどの施設が整備されており、バーベキューやキャンプファイヤー、渓流でのマス釣りやつかみ取りなど、自然体験を満喫することができます。秋には紅葉まつりも開催され、観光と自然体験が一体となった賑わいを見せます。
本宮山の山頂近くには、三河国一宮として知られる砥鹿神社の奥宮が鎮座しています。本宮山そのものが信仰の対象であり、古代より多くの人々がこの地を目指して山道を登ってきました。
奥宮周辺には、登山者のために飲料水の自動販売機、公衆トイレ、休憩所が整備されており、安心して参拝・休憩ができる環境が整っています。信仰の場でありながら、現代の登山者にも配慮された施設構成となっている点は、本宮山ならではの特徴です。
晴れた日には、山頂から三河湾を一望することができ、条件が良ければ途中の展望ポイントから富士山を遠望できることもあります。山頂には一等三角点(点名「三本宮山」)が設置され、周囲には豊橋中継局のアンテナ群が並ぶ、山頂ならではの景観も見られます。
本宮山はハイキングや登山の名所としても高い人気を誇り、休日には多くの登山者で賑わいます。特に一般的なのが、豊川市側にある本宮山ウォーキングセンターを起点とし、表参道を通って奥宮を目指すルートです。
この表参道は、徳川時代に建立された大鳥居をくぐるところから始まり、1丁目から50丁目までの丁石が登山者を導きます。道中には見どころも多く、25丁目の難所「馬の背岩」、28丁目の「日月岩」、39丁目の「山姥の足跡」など、伝承や言い伝えが残る奇岩が点在しています。
登山時間は往復でおおよそ3~5時間ほど。古くから善男善女が踏み固めてきた山道を歩くことで、自然だけでなく、信仰の歴史を体感することができます。
本宮山には複数の登山ルートが整備されており、豊川市側の表参道のほか、岡崎市側のくらがり渓谷からの登山道も人気があります。くらがり渓谷ルートは渓流沿いの景観が美しく、夏場でも比較的涼しいのが特徴です。
また、新東名高速道路が山の南側を貫いており、本宮山トンネルも通っています。さらに、2006年に無料開放された本宮山スカイラインを利用すれば、山頂近くまで車でアクセスすることも可能です。
本宮山スカイラインは、新城市作手保永から作手白鳥までを結ぶ延長11.6キロメートルの道路です。かつては有料道路でしたが、現在は県道として無料開放され、ドライブコースとしても親しまれています。
本宮山ウォーキングセンターでは、登山道の案内マップをはじめ、周辺の自然や見どころに関するさまざまな情報を得ることができます。出発点に位置しているため、登山前に立ち寄るのがおすすめです。併設されたギャラリーでは、本宮山の自然をテーマにした写真展示も楽しめます。
手取山公園は「学びの森」をテーマに、市民活動を通じて緑の大切さを体感できる公園です。ボランティア団体によって管理され、清掃活動や自然観察会、花植え、マレットゴルフ大会など、地域に根ざした多彩な取り組みが行われています。
本宮山の信仰を語るうえで欠かせないのが砥鹿神社です。砥鹿神社は豊川市に鎮座し、三河国一宮として古くから東海地方一帯の信仰を集めてきました。式内小社に列し、旧社格は国幣小社、現在は神社本庁の別表神社となっています。
砥鹿神社には、本宮山山頂に鎮座する奥宮と、山麓の豊川市一宮町にある里宮があります。本宮山そのものが御神体とされ、山岳信仰が古代から深く根付いてきました。
主祭神は大己貴命(大国主神)です。社伝によれば、大宝年間(701~704年)に、天皇の病気平癒を祈るため、本宮山の神を迎えたことが砥鹿神社の起源とされています。
砥鹿神社は『延喜式』にも名を連ねる格式ある神社で、歴代の武家からも厚く崇敬されてきました。境内には江戸時代建立の西参道石鳥居や、巨大なケヤキの木、奥宮社叢など、多くの文化財・天然記念物が残されています。
本宮山は、豊かな自然、長い歴史、そして人々の祈りが重なり合う特別な場所です。登山やハイキングを通じて自然を満喫し、砥鹿神社奥宮に参拝することで、心身ともに清められるような時間を過ごすことができるでしょう。東三河を訪れる際には、ぜひ本宮山を訪れ、その奥深い魅力に触れてみてはいかがでしょうか。