初立池は、愛知県田原市に位置する、豊川用水の調整池です。2010年(平成22年)3月25日に農林水産省によって「ため池百選」に選定され、自然豊かな景観と重要な農業資源として広く知られています。
初立池は、独立行政法人水資源機構が管理する初立ダムによって形成された人造湖で、正式名称は「初立調整池」といいます。水源である宇連ダムから約98キロメートル離れた豊川用水東部幹線路の末端に位置し、洪積台地の谷間に築かれた二つのダムによって水を貯めています。
有効貯水量は160万立方メートルに達し、渥美半島先端部の農業用水を安定供給する役割を担っています。周囲の地質は比較的新しい堆積層に囲まれていますが、北側には変性玄武岩、南側にはチャートと混成岩という古い岩盤が存在し、これらを巧みに利用してダム構造を支えています。
豊川用水の建設時には各地で遺跡が発見されましたが、初立ダム建設中の1968年(昭和43年)にも、主堤南側で伊良湖東大寺瓦窯跡が発見され、発掘調査後、現地保存されています。この史跡もまた、初立池周辺の魅力を高めています。
主堤は中心コア式アースダムとして建設されており、堤体正面にはキンメツゲによる文字が描かれています。このデザインは訪れる人々の目を引き、独特の風格を漂わせています。
副堤は傾斜コア式アースダムで、堤高12.5メートル、堤長105メートル、体積32,000立方メートルの規模を誇ります。これにより初立池の水量が調整され、安定した農業用水の供給が可能となっています。
初立池周辺は「初立池公園」として整備され、親水護岸や散策路が整備されています。平成4年度から始まった水環境整備事業により、現在では多くの人々が訪れる憩いの場となっています。
春から初夏にかけては、桜、ハナショウブ、アジサイなどの花々が咲き誇り、訪れる人々を魅了します。また、2008年(平成20年)には「美しい愛知づくり景観資源600選」にも選ばれ、その美しい景観が広く認知されました。
棚田を利用して整備されたしょうぶ園では、約12,000株もの花菖蒲が栽培されています。5月中旬から6月上旬にかけて見ごろを迎え、美しい紫や白の花々が辺り一面に咲き誇ります。
初立池の周囲には、「桜のプロムナード」と呼ばれる散策道が整備されています。南側1,140メートル、北側829メートルにわたって約1,000本の桜が植えられ、3月末から4月初めには満開の桜が訪れる人々を迎えます。
田原市の水源である宇連ダムや大島ダムから放流された豊川用水は、約100キロメートルの旅を経て初立池に到達します。この最終調整池により、渥美半島の豊かな農業地帯を支えるための水が安定的に供給されているのです。
豊川用水事業は戦後復興の中、渥美半島を日本有数の畑作農業地帯へと変貌させました。現在も初立池は、約1,200ヘクタールに及ぶ広大な畑作地帯を潤しており、キャベツ、メロン、イチゴといった農産物を全国に出荷する一大産地となっています。
初立池の夕ぐれは、「美しい愛知づくり景観資源600選」にも選定されており、満々と水を湛えた紺碧の水面に映る夕陽は、訪れる人々に感動を与えます。
近隣の伊良湖岬は「サシバの渡り」として知られ、渡り鳥の大群が飛来するスポットです。冬季には初立池にも多くの水鳥が訪れ、バードウォッチング愛好者にとっても人気の場所となっています。
初立池は、農業用水の安定供給という実用的な役割を果たすだけでなく、美しい自然と歴史的価値を併せ持つ貴重な場所です。春には桜、初夏には花菖蒲やアジサイ、冬には渡り鳥と、四季折々の魅力を楽しめるため、訪れるたびに新たな発見があります。田原市を訪れる際には、ぜひ初立池の自然と歴史に触れてみてはいかがでしょうか。