幡頭神社は、愛知県西尾市吉良町宮崎前留谷に鎮座する、格式高い由緒ある神社です。地元では「はずじんじゃ」と親しまれており、三河湾を望む美しい岬の先端に位置しています。
この神社は、大宝2年(702年)に創建されたと伝わり、平安時代初期に編纂された『延喜式』にもその名が記される式内社です。長い歴史を持つこの神社は、数多くの文化財を有し、地域の人々から深い信仰を集め続けています。
幡頭神社の主祭神は、尾張国造の祖であり、日本武尊(やまとたけるのみこと)の東国遠征に従ったとされる建稲種命です。伝承によると、東征の帰路に駿河沖で遭難し、その御遺骸が現在の宮崎海岸に漂着したため、地元の人々がこの地に祀ったとされています。建稲種命は「幡頭(はたがしら)」の役割を担っていたとされ、神社名の由来にもなっています。
この神社には、建稲種命のほかに誉多別命(ほんだわけのみこと)および大物主命(おおものぬしのみこと)も合祀されています。これらの神々がともに祀られることで、幡頭神社はさらに厚い信仰と霊験を持つ神社として人々に崇められています。
幡頭神社の起源は古く、大宝2年(702年)に創建されたとされます。延長5年(927年)に完成した『延喜式神名帳』には、「参河国播豆郡 羽豆神社」と記載され、式内社として記録されています。また、『三河国内神名帳』には「正一位 羽利大明神 坐幡豆郡」として記載されており、当時からその重要性が認識されていたことがわかります。
現在の本殿は天正8年(1580年)に再建されたもので、桃山時代の建築様式を伝える貴重な建造物です。明治維新後の近代社格制度においては明治4年(1871年)に郷社に列し、大正10年(1921年)には県社に昇格しました。
本殿は1921年4月30日に古社寺保存法に基づく特別保護建造物に指定され、文化財保護法施行以後は国の重要文化財となりました。平成27年(2015年)から平成28年(2016年)にかけては、西尾市教育委員会の主導で保存修理工事が行われ、後世への継承に努めています。
幡頭神社の境内は、三河湾を一望できる高台にあり、美しい自然と調和した神聖な空間が広がります。本殿は「一間社流造」で檜皮葺の屋根を持ち、反り返った庇のラインが印象的です。素朴ながらも力強い絵様や蟇股(かえるまた)の意匠が、桃山時代の美意識を今に伝えています。
本殿のほかにも、拝殿・脇殿・神馬舎・手水舎・社務所などの建造物が整然と並び、訪れる人々に清々しい印象を与えます。境内社として祀られている神明社および熊野社もまた重要な存在です。
天正8年(1580年)に造営された本殿は、国の重要文化財に指定されており、附属として棟札3枚が現存しています。流麗な屋根の曲線と、内部に施された彫刻の美しさが特筆されます。
同じく天正8年に建てられたとされる神明社本殿および熊野社本殿は、昭和32年(1957年)に愛知県指定有形文化財に認定され、さらに令和4年(2022年)には国の重要文化財に追加指定されました。それぞれの棟札も保存されており、歴史的価値の高い建築物です。
幡頭神社へのアクセスは、名古屋鉄道(名鉄)西尾線・蒲郡線「吉良吉田駅」で下車し、そこからタクシーで約7分となっています。公共交通機関の利用でも訪れることができ、観光客にとっても比較的アクセスしやすい立地です。
所在地:愛知県西尾市吉良町宮崎前留谷60-1
幡頭神社は、古代から続く長い歴史と文化を今に伝える貴重な神社です。国や県から指定を受けた重要文化財を数多く有し、神聖な雰囲気の中で神々に祈りを捧げることができます。三河湾を望む絶景の中、歴史に思いを馳せながら参拝する時間は、訪れる人々にとって特別なひとときとなることでしょう。