海辺の文学記念館は、愛知県蒲郡市竹島町にある文学をテーマとした博物館です。美しい竹島海岸に面し、クラシカルな佇まいの蒲郡クラシックホテルのすぐ下に位置するこの記念館は、1997年(平成9年)5月11日に開館しました。入場は無料で、市が管理する公共施設として、多くの来館者を迎えています。
この記念館は、かつて文人や文化人が集った「料理旅館 常磐館」の跡地に建てられました。常磐館は明治時代末期に建てられた由緒ある旅館で、多くの著名作家たちが滞在し、その思い出や作品に影響を与えました。記念館はその趣を忠実に再現し、文学と歴史を感じられる空間として整備されています。
館の建物は、1910年(明治43年)に中央本町(旧・宝飯郡蒲郡町)で建築された岡本医院診療所の構造をベースにしており、実測調査を経て外観が再現保全されました。使用されている部材の一部は当時のものを再利用しており、延床面積は384.5平方メートルです。
館内では、蒲郡にゆかりのある作家や、蒲郡を舞台とした文学作品を紹介する展示が充実しています。加えて、旧・蒲郡ホテル(現在の蒲郡クラシックホテル)や常磐館に関する資料、さらには当時の彫刻作品である「十二支透彫額」も公開されており、文学と建築、歴史が交錯する空間が広がっています。
2001年(平成13年)に開始された「時手紙」は、来館者が未来の自分や大切な人へ宛てた手紙を、2か月後から最長10年後に届けることができるサービスです。年数に応じた料金で保管・発送され、2011年ごろからは全国的に話題となりました。人生の節目や旅行の記念に利用されることが多く、記念館ならではのロマンあふれる取り組みです。
「思い出ノート」は、来館者が自由に感想や思い出を書き残すことができるノートで、訪れた人々の声が綴られています。蒲郡の旅の記録や文学への想いなど、個性豊かな言葉が並び、記念館の温かみを一層引き立てています。
1912年(明治45年)、名古屋の織物商・滝信四郎氏が竹島海岸に「料理旅館 常磐館」を創業しました。以降、数多くの著名な作家が滞在し、文学作品を生み出しました。例えば、1922年には菊池寛が「火華」を発表し、1925年には川端康成が「驢馬に乗る妻」を世に送り出しました。
昭和に入ってからも多くの文化人が足を運び、1940年代には軍による病院提供や、戦後の米軍接収など激動の歴史を経ます。そして、時代の流れとともに旅館の役目を終え、1982年(昭和57年)に惜しまれながらもその歴史に幕を下ろしました。
旧・常磐館の跡地は「グリーンパーク」として整備された後、1997年に「海辺の文学記念館」として新たに生まれ変わりました。これは、蒲郡の歴史と文化を今に伝える象徴的な出来事であり、地域の誇りとも言える存在となっています。
2020年(令和2年)4月より、蒲郡クラシックホテルが指定管理者となり、地域資源としてのさらなる発展が期待されています。観光と文化が融合したこの施設は、訪れる人々に深い感動と学びを提供し続けています。