実相寺は、愛知県西尾市上町下屋敷に位置する臨済宗妙心寺派の由緒ある寺院です。鎌倉時代に創建されたこの寺院は、吉良氏の菩提寺として長い歴史を誇り、現代に至るまで数々の文化財や伝統行事を守り続けています。春には「おしゃかさん」と呼ばれる花祭りが開催され、多くの参拝者で賑わいます。
実相寺は、文永8年(1271年)、吉良満氏によって創建されました。開山には、東福寺から迎えられた高僧・円爾(聖一国師)が任じられました。「実相安国寺伝記」によれば、当時は海岸に近い松林を切り開いて伽藍を建立したと伝えられており、当初の名称は「実相安国禅寺」でした。天文10年(1541年)には、臨済宗妙心寺派に改宗され、織田信長の兵火により多くの建物が焼失するなど、波乱の歴史を歩みました。
その後、徳川家康の重臣である鳥居元忠の支援により、慶長8年(1603年)に本堂である方丈が再建されました。この時代には南北朝時代から伝わる文化財も多く残され、現在に至るまで貴重な遺産として保存されています。
明治時代には、方丈の大規模な改修が実施されました。屋根の形状は入母屋造から切妻造に変更され、柿葺きの屋根も瓦葺きに改められました。廊下の一部も撤去されるなど、建築的な変化が見られます。
昭和34年(1959年)の伊勢湾台風では、境内の木々が倒れるなどの被害を受けました。2003年には方丈と庫裡が国の登録有形文化財に登録され、2010年には境内の三河クロマツ群落が西尾市の指定文化財となりました。2019年からは方丈の修復工事が開始され、屋根の銅板葺き化や広縁の復元などが行われました。2020年には西尾市教育委員会による調査で、江戸時代後期にも大規模な修理があったことが明らかとなりました。
慶長8年(1603年)に再建された方丈は、臨済宗の大型建築として、江戸時代の面影を色濃く残しています。2021年には復元修理が完了し、再び入母屋造の屋根に戻されました。
庫裡は元禄年間(1688年~1704年)に再建されたもので、平屋建て・入母屋造の構造です。玄関を介して方丈の東側に接続し、臨済宗の典型的な形式を今に伝えます。
室町時代後期の建築で、天正年間に浜松市から移築されました。内部には釈迦三尊像や四天王像が祀られています。1976年に解体修理が施され、往時の姿が再現されています。
境内には勅使門、鐘楼、古井戸などもあり、特に鐘楼には希少な形状である八葉宝鐸型の梵鐘が吊るされています。これらの建物は歴史と宗教文化を体感できる貴重な存在です。
毎年4月には花祭り「おしゃかさん」が盛大に開催され、地域の人々や観光客で賑わいます。2014年には愛知登文会によって県内文化財の特別公開が初めて実施され、実相寺もその対象に選ばれました。さらに2022年には「実相寺の梵鐘」をテーマとする歴史講演会が開催され、寺の文化的価値が改めて紹介されました。
実相寺は、約750年にわたる歴史の中で幾度もの困難を乗り越えながら、文化財や宗教的意義を守り続けてきました。禅の心を体感できる場所として、また地域文化の象徴として、多くの人々に親しまれています。歴史的な建造物や貴重な文化財を間近で見ることができる実相寺は、愛知県西尾市を訪れる際にはぜひ立ち寄りたい名所の一つです。